ニューノーマル時代に向けてのマーケティング(前編)

コロナ禍が国内で言えば緊急事態宣言が解除され落ち着きつつありますが、世界全体で見れば、ワクチンや抗体など根本的な解決方法が見つかるまでは、まだまだ予断が許されない状況だと思います。秋以降も第2波、第3波となれば行動は抑制されるでしょう。では、この様な状況下でどの様なマーケティングを進めるべきか、改めて、考えていきたいと思います。

■緊急事態宣言下での状況

まず、新型コロナの感染者確認から緊急事態宣言発令時の生活がどの様になったか振り返って見ましょう。マスクや消毒液、トイレットペーパーなどの買占めから、学校の休校、リモートワークの推進、集団感染を防ぐために人が集まる様なイベントや施設・店舗の休止・休業・営業活動の制限、海外からの渡航者の入国制限、最終的には不要不急の外出の禁止など、人の行動に制限が掛けられた状況です。私自身も、3月までは打合せで外出していたが、4月に入ってからテレカンだけになり、ほぼ外出する事なく、自宅に引き篭もっていました。

その様な状況下で、どの様な人々の生活だったのか、改めて、振り返ってみましょう。

1.大規模施設、イベントの停止

東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオJAPANなどのテーマパークをはじめ、デパートやアウトレットモールなどの大型商業施設、映画館、美術館、博物館、音楽フェスなど、実際に人が集まる施設やイベントが軒並み中止になり、そして、東京オリンピックも来年に延期になりました。集団感染が発生したライブハウスやスポーツジムなどは、いち早く営業停止していた様に見受けられました。そして、緊急事態宣言後は、小規模の店舗も軒並み営業停止や、営業時間の縮小を要請されました。

2.人の移動の大幅な減少

コロナ禍は中国の武漢から世界へ拡散されたとされてますが、旧正月期と重なり、中国からの訪日旅行者数が大きく減少しました。4月の訪日外国人旅行者数は前年同月対比で99.9%減少した様です。同様に出国先の国々も入国禁止や制限が掛けられてますので、3月の出国者数が前年同月対比85.9%減少とのことです。
国内でも、出張禁止など長距離移動が控えられ、東海道新幹線は4月前半の乗車率は前年対比で85%減。私も3月までよく東海道新幹線に乗車していたが、3月くらいから新幹線が空きだし、午前の上りの新幹線でも窓際のみ席が埋まる感じでした。もっと減少を感じたのは長距離バスで、平日の夜行バスで、常に乗車率が80〜100%でしたが、3月の半ばに乗った際には、乗車率10%未満でした。

3.不要不急の外出禁止

緊急事態宣言発出後は、より一層活動を抑える様になりました。海外の様なロックダウン(都市封鎖)ほどではないですが、通院、生活必需品の買い出し、必要な職場の出勤、生活維持の為の運動以外の外出・・・いわゆる「不要不急の外出」を控え、密閉空間、密集場所、密接場所が重なる状況を避ける様に要請されました。あくまでも、罰則のない要請なので、もう少し人の動きがあるのかなと個人的には予測してましたが、ホームセンターなど一部施設を除いて人混みも出来ずに、ある程度遵守されていた様に見受けられました。

4.1万人を超える解雇、雇い止め

ここまで人の活動が抑えられると、消費されない物、生産の必要のない物が多数出てきました。例えば、話題になりましたが、原油価格が一時マイナスになったり、経済活動ももちろん低下しました。その影響で、2月/282人、3月/835人、4月/2,654人、5月21日まで/7,064人が解雇や雇い止めが起きています。産業別に見ると宿泊業、道路旅客運送業、飲食業、製造業などが多い様です。

■生活環境の変化

では、自宅でのリモートワークであったり待機などで在宅時間が大きく増え、実際の人の活動はどうなったでしょうか?

例えば、TVの視聴率を見てみると、2月下旬までは前年と比べても大きな差異はなかったが、北海道の非常事態宣言、小中高校の休校などをきっかけに前年対比で伸び出して、3月末の志村けんさんの逝去の報道以降は前年対比10%伸びています。また、4月の12時〜18時台の視聴率が伸びているのはもちろん、朝のピークタイムが前年までは7時台だったものが8時に変わっているのも非常に興味深い結果が出ています。リモートワークになり、コロナ禍であれば通勤時間であろう8時台までTVが観ることができているのかなと推測されます。

消費行動も大きく変化しています。三井住友カード調べによると、利用人数、決済件数、決済金額全てにおいて減少傾向にありますが、ホームセンター、スーパー、ペット関連、ECモール・通販、通信サービス、美容品では3月に件数も金額もプラスになっており、消費を抑えつつ、巣ごもりの対策を行っているのがよく分かります。また、面白いが20〜30代のスポーツブランドの購入が増えています。これはテレワーク推奨に伴い、ファッション性から体に負担のかけない格好に移行しているのが予測されます。意外なところで、高齢者のECモールでの決済が増えているのも、外出抑制の影響と考えられます。そして、4月にいよいよ緊急事態宣言が発出され、より一層外出する機会が減っている中、20〜40代で玩具・娯楽品が大きく伸びているのが、リモートワークにより、自分の時間が増えたと推測されます。

また、スマホアプリにもコロナの影響が出ており、ZoomなどのWeb会議システムのシステム、Slackなどのチャットツールのダウンロードは増えているのは当然なのですが、ゲームアプリでは、今、流行っているゲームの他に3〜4年前に流行ったゲームアプリが伸びており、一度離脱したユーザーが改めて時間ができたことにより、戻ってきているのが傾向として出ています。また、電子書籍も伸びていますが、他にフィットネスアプリ、カラオケアプリなど伸びています。

これらのことから、未知のコロナに恐れを抱きつつ、自宅待機やリモートワークにより、自由な時間が増え、消費は抑えつつ、自宅で過ごす時間を快適に過ごす為の消費は進んでいる事が分かります。

次回はこれらの事を受けて、マーケティング活動がどの様に変化して、今後どの様になっていくのか書いていきたいと思います。

羽木昌尚

2004年にコンテンツプロバイダに入社。
デジタルコンテンツの権利の許諾獲得、自社サービスのプロモーション業務に従事。
2006年にコンテンツデベロッパーに入社。
自社アプリの広告出稿業務に従事し、担当アプリにて900万DL達成。
また、自社メディアでの広告マネタイズを経験。
2018年より独立し、モバイルゲームやアプリをはじめ、
有名おもちゃメーカーなど様々な企業、プロダクトのマーケティング戦略の立案と実行を支援。

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