ニューノーマル時代に向けてのマーケティング(中編)

前回はコロナ禍での人々の活動を簡単にまとめてみましたが、今回は企業のマーケティング的な活動をまとめてみましょう。

■自粛ムードによるプロモーションプランの変更、出稿停止

このコロナ禍で不要不急の外出自粛を受け、当然の様にプロモーション施策やクリエイティブの変更や、プロモーション自体の停止になったケースが数多く見受けられました。

まずは、3月くらいから、ACジャパンのTVCMをよく見かけたと思いますが、これは広告主都合の出稿自粛の為になります。不要不急の外出自粛の中、来店訴求などのクリエイティブ自体がそぐわないのが理由になります。人が集まるイベントや施設、封切り映画、旅行、交通がそれにあたりますが、例えば、JRA(日本中央競馬会)はここ数年若手俳優を多数起用し、楽しそうに「競馬場に行こう」の様な訴求をプロモーションで打ち出していましたが、2月末からの無観客レースを受け、TVCMもブランド広告に差し替えられました。そもそも、IR法におけるギャンブル依存の懸念を回避する為に、ここ数年訴求をレース訴求から競馬場への来場訴求に切り替えていましたが、他に展開できる広告素材がなかった様でブランド広告、競馬学校入校のクリエイティブに変わっています。また、不動産業の企業は来店訴求からWebへ、保険業の企業はコロナも保険適用内と訴求点を変えて早めに手を打っていました。

4月になると新たなキャンペーンやクリエイティブが出てくる頃になりますが、今年は医療従事者への労い、「一緒に頑張りましょう」の共感を促すクリエイティブ、この時世を反映させてリモートで制作されたクリエイティブなどが増えてきました。また、過去の反響のよかったクリエイティブを一部再編集を加えて再出稿するケースも見受けれられます。また、直接的なプロモーションではないですが、この時期ですとエイプリルフールに、最大瞬間風速的な話題になる様なネタを仕込む企業は多いですが、昨年は新元号の発表が4月1日にあり、ニュースになりにくいので大企業のネタは少なかったのですが、今年はコロナ禍による自粛ムードで、より一層少なかった様に見受けられました。自粛ムードの中、リアルな口コミも発生しにくい状況下では、お祭り的なイベントは流石に難しいと判断された企業が多かったです。

また、東京オリンピックの延期の影響は大きいと思われます。オリンピックのスポンサー企業、いわゆるナショナルクライアントのプロモーションプランは大き変更を余儀なくされたと思います。本来であればお祭り騒ぎの中で消費を促す様な訴求を行ったと思いますが、コロナ禍のお陰で消費者は冷静になり、消費縮小した中で、どの様な訴求で、再度オリンピックに向けて行くのか、注視が必要です。

■加速度的に進むユーザーとのコミュニケーション

以前からFacebook、Twitter、InstagramなどのSNSをはじめ、YoutubeやTikTokなどの動画配信プラットフォーム、ブログやNote、自社HPなどを介してのコミュニケーションを行っていました。消費者に加え、将来の消費者に対し、顧客や消費者が「今、知りたいこと」を発信し、「喜びや楽しみ」を共有し、「共感や繋がり」を感じてもらえる様なコミュニケーションをとってきました。これらの事はメーカーや販売企業だけではなく、俳優、芸人、アーティスト、小売店など様々な形で情報発信やユーザーとのコミュニケーションをとる様になりました。俳優たちのSNS進出も共感や繋がりを感じてもらいエンゲージメントを高めたい意図があると思います。マスメディアの時代は一方的なコミュニケーションで良かったのですが、webメディアの発達により、コミュニケーションの深度を深める為の手段が増え、固定ファンを繋ぎ止める為にもweb上のコミュニケーションが必須になってきました。

また、web上だけでなくリアルな場でユーザーオフ会やセミナー、ファンイベント、試遊会、展示会、イベントへのブース出展などオフラインでのコミュニケーションを行ってきました。例えば、サーキットでの車の試乗会、雑誌などのイベントやセミナーなどはじめ、今では、コミケやニコニコ超会議に車メーカーや食品メーカーが出展したり、カフェを貸し切った小規模のオフ会など、様々な形式で盛んに行われていました。これらの施策の狙いは参加者起点の口コミであったり、メディアへの情報提供であったりしますが、趣味や嗜好、業務内容など一つのキーワードで繋がった「クラスタ」に対し、利用者同士を実際に合わせたり、開発者や運営会社の人と話ができる環境を用意することにより、より強固な「コミュニティ」の形成を考えています。。実際に私も、担当プロダクトでユーザー主導のオフ会が数多く行われているのをネットの掲示板などで知り、オフ会を行っているユーザー同士を繋げる意図を持って、公式オフ会を実施しました。実際のユーザー主導のオフ会が居酒屋で行われているケースが多かったので、お酒とつまみを用意して、あえて公式オフ会として、運営チームも参加し、ユーザーとのコミュニケーションを深めることができましたし、実際にユーザー同士もプロダクトを楽しむ同志ですので、大いに盛り上がり満足度の高いイベントでした。その後もコミュニティ同士が繋がりより強固なコミュニティ形成に繋がりました。

しかしながら、コロナ禍により、リアルな接触が制限され、外出自粛でオフラインでのコミュニケーションの実施が難しくなり、Web上でのコミュニケーションに加速度的に進んでいる様に見受けられます。

■コロナ禍中でのユーザーとのコミュニケーション

前回、消費者は「未知のコロナに恐れを抱きつつ、自宅待機やリモートワークにより、自由な時間が増え、消費は抑えつつ、自宅で過ごす時間を快適に過ごす為の消費は進んでいる」ことが分かりました。では、この様な消費者にどの様にコミュニケーションをとっていたでしょうか?

まず、コロナ禍に対して「今、知りたいこと」として、コロナをはじめとする感染症の対策をSNSや動画を用いて紹介を行ってました。例えば、消費材メーカーなどは、自社商品を用いた対策法を教示したり、アーティストが手洗い歌を作り、俳優やタレントが手洗い動画などをSNSなどを用いて配信していました。このほかにも、手作りマスクの作り方や、在宅による運動不足を解消するためのストレッチの方法などコロナ禍に有効な情報を、様々な手段を用いて発信されています。リモートワークの環境の整え方も数多くみられました。カメラ、マイクの比較からはじまり、服装やメイクなどのライフハック術など、この機会にWeb会議システムを使われる方も多かったと思われますので、参考になった方も多いと思われます。私もWeb会議用に照明を一つ追加しました。

「共感や繋がり」を感じるコンテンツで、このコロナ禍の中で言えば、俳優やスポーツ選手、タレントなどによるSNS上のバトンが、まず最初に思いつくでしょう。また、企業もTwitterやInstagramなどでハッシュタグを用いて、コロナ禍を克服した明るい未来を想像させる。。。言い換えれば、今ではなく、将来の購入を想像させる様な投稿を用いたキャンペーンを展開しています。

「喜びや楽しみを共有」といった観点での動きは、このコロナ禍ではかなり多かったと思います。リモートや休校により在宅時間が伸び、在宅ながら自分の時間が増え、コンテンツの消費時間が伸びる事が容易に想像できたでしょう。今まで有料でしか見れなかったコンテンツが、Youtubeや電子書籍のプラットフォーム上で無料公開になったり、共感や繋がりを感じさせる様にYoutubeでのプレミア公開を行い、チャット上で感想を述べあったり、様々な方法で実施されてきました。最たる事例としては、ゲーム「フォートナイト」では人気ラッパー、トラヴィス・スコットがバーチャルライブを行い、累計2700万人が参加したそうです。

これらの事例は、TVや新聞、雑誌では一方的なコミュニケーション、もしくはリアルタイム感が少ないコミュニケーションになり、熱量が冷めてしまう様な感じがします。ラジオは生放送が多いので、熱量や速報性は高いと思いますが、あくまでもペイドメディアになりますので、メディアに情報発信の取捨選択の権限が委ねられます。やはり、自分たちで情報発信が可能なオウンドメディアと、情報を伝播させる為のアーンドメディアが熱量が冷めないスピード感で双方向コミュニケーションが可能になっています。しかしながら、アーンドメディアのコントロールは第三者に委ねるのでコントロールが難しく、特にSNSやリアルの口コミは予想もしない方向に進む事も多々あります。それらを防ぐために、消費者を理解し、同じ目線にいかに立てるかが重要になります。

では、実際にどの様に消費者理解を深めるべきなのか?そして、どの様なコミュニケーションが消費者に必要とされているのか?を次回深めていきたいと思います。

羽木昌尚

2004年にコンテンツプロバイダに入社。
デジタルコンテンツの権利の許諾獲得、自社サービスのプロモーション業務に従事。
2006年にコンテンツデベロッパーに入社。
自社アプリの広告出稿業務に従事し、担当アプリにて900万DL達成。
また、自社メディアでの広告マネタイズを経験。
2018年より独立し、モバイルゲームやアプリをはじめ、
有名おもちゃメーカーなど様々な企業、プロダクトのマーケティング戦略の立案と実行を支援。

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