日本の広告費2020

先日、電通より毎年恒例の『日本の広告費2020』が発表されました。コロナ禍で下がることは想定していましたが、前年対比 88.8%の6兆1,594億円になりました。この数字は東日本大震災の2011年以来のマイナス成長で、リーマンショックの影響があった2009年以来の二桁減少になります。広告主の出稿を控えるケースが多いと思いますが、コロナ禍により媒体自体の力も落ちているケースもあるでしょう。今回はこちらを見て行きたいと思います。

■各メディアの状況

・新聞広告費 3,688億円(前年対比 81.1%)
・雑誌広告費 1,223億円(前年対比 73.0%)
・ラジオ広告費 1,066億円(前年対比 84.6%) 
・テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連) 1兆6,559億円(前年対比 89.0%)

新聞に関しては、コロナ禍以前の2002年以降、新聞紙自体の発行部数が下がっていましたが、コロナ禍により2020年の発行部数は前年対比 93%と大きく下がりました。想定されるのは以前から落ちている駅売分がコロナ禍で加速度的に落ちていると想定されます。
紙の出版物の推定販売金額は、前年対比 99.0%でしたが、雑誌が落ちたのかなと思われます。コンビニでも雑誌売り場が縮小していますし、コロナ禍で立読みできない状態では、広告主にとっても出稿するメリットが下がっているでしょう。とにかく、紙媒体は媒体自体が売れない、媒体自体の販売面が低下しているのが考えられます。

逆に、在宅時間が伸びたことにより、ラジオ、TVの接触時間が伸びたのですが、コロナ禍とそれに伴う、オリンピックを初め様々なイベントが延期、中止により出稿縮小の影響が出ました。今、思い出すと昨年の3月頃から4月末くらいまで、クリエイティブの差し替えなどにより、ACの広告が一時期増えましたからね。

・インターネット広告費 2兆2,290億円(前年対比 105.9%)

インターネットの広告もコロナ禍の影響を受け広告出稿減少の影響を受けていましたが、いち早く他メディアより回復しました。巣篭もり需要の影響で、SNSをはじめ動画配信サービスの接触機会も増え、プラットフォーマーが提供する運用型広告が伸びた様です。大手クライアントの出稿が減り、出稿単価が下がったことで、出稿へのハードルが一段と下がったのかなと考えられます。

・屋外広告 2,715億円(前年対比 84.3%)
・交通広告 1,568億円(前年対比 76.0%)
・イベント・展示・映像ほか 3,473億円(前年対比 61.2%)
・POP 1,658億円(前年対比 84.2%)
・フリーペーパー 1,539億円(前年対比 72.9%)

外出した際に目に触れる駅の広告や、駅によく置いてあるフリーペーパー、来店を促進させるPOP、そして実際に行って色々体験できるイベントはより一層減少しています。私自身も投げ売りの様な広告枠の話もよく聞きました。このことをきっかけに屋外広告や交通広告などはデジタル化が進み、インターネット広告の様な運用型広告が増えるきっかけにもなるんじゃないかなと思います。枠売りは限界にきているんじゃないかなと思います。

・折込 2,525億円(前年対比 70.9%)
・ダイレクト・メール 3,290億円(前年対比 90.3%)

新聞折込やDMも減少していますが、こちらはそもそも効果の部分で疑問符がつくので、コロナ禍が落ち着いても減少するでしょう。

■クライアントの状況

クライアントの動向を見ると、交通、レジャー、流通、小売業、ファッション、化粧品など外出に伴うクライアントが出稿の縮小、停止し、大きく影響が出ました。
コロナ禍による外出・移動の規制により、巣ごもり需要が活発化し、デリバリーやネット通販などC to C向けが増え、リモートワーク促進のため、様々なSaaS系ツールベンダーが出稿を増やしていたと感じられました。個人的にはセールスフォースがTVCMに出稿していたのが印象深かったです。

■今年はどうなる?

昨年の3月は、年度末でいわゆる予算消化のための出稿が増える時期に、未知のコロナ禍により出稿を控えるケースが増えパニックに陥っていたと思います。3〜4月といえば、新年度の予算策定で忙しい時期になりますが、慣れないリモートワークで予算策定が進まないケースもよく聞きました。予算が決まらなければ、マーケティング施策も決まらないので、ヤキモキしたメディア、代理店も多かったでしょう。しかし、コロナ禍から一年近くが過ぎ、コロナの対策の取り方も馴れてきたので、今年はある程度は回復すると思います。ただ、ここでポイントになるのは、デジタル化できるメディアとできないメディアで大きく差が出ると考えています。コロナ禍により、いわゆる「枠買い」はリスクになることが明確になり、状況に合わせて出稿できる運用型広告ができるメディアが伸びるでしょう。TVCMも運用型広告の様に出稿できる時代になり、交通広告や屋外広告もデジタルサイネージが増え、新聞・雑誌の紙メディアも加速度的にデジタル化が進むでしょう。

羽木昌尚

2004年にコンテンツプロバイダに入社。
デジタルコンテンツの権利の許諾獲得、自社サービスのプロモーション業務に従事。
2006年にコンテンツデベロッパーに入社。
自社アプリの広告出稿業務に従事し、担当アプリにて900万DL達成。
また、自社メディアでの広告マネタイズを経験。
2018年より独立し、モバイルゲームやアプリをはじめ、
有名おもちゃメーカーなど様々な企業、プロダクトのマーケティング戦略の立案と実行を支援。

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