スモールビジネスのマーケティング考  -新しい形のメーカー直販・D2Cってなに?①-

ここ数年で「D2C」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
D2Cとは、Direct to Consumerの略になり、
生産者が企画、生産した商品を問屋や小売店を介さずに、
消費者と直接取引する販売方法になります。

以前にもこちらでD2Cのことを取り上げましたが、
前回の記事ではECプラットフォームや概要的な話でしたが、
踏み込めなかったD2Cの持つ魅力をマーケティング観点で取りまとめてみました。
と言うのも、たまたま私個人のお仕事として、
伝統的産業の通販のお手伝いをさせて頂くことになり、
改めて、通販とはなんぞや?D2Cとはなんぞや?と考えをまとめたものになります。

■通常の流通やメーカー直販とD2Cの違い

2010年ごろにアメリカで生まれたD2Cですが、メーカー直販(製造直販)と思われがちですが、
ECや物流の発達、マーケティングの浸透など様々な要素が加わり、
ブランド力の向上だけでなく、収益も向上しているのが、D2Cという形態になります。
また、アメリカと日本では既に異なる考え方でそれぞれの土壌にあった成長をしています。
アメリカの場合、メーカー直販である恩恵である「安くて質の良い商品を得る」ためのD2Cである傾向があります。
ですが、日本の場合は「少しでも高くていいので質の良いユニークな商品を得る」ために消費者がD2Cを選択していると考えています。

なぜ、日本でこのような動きになったのでしょうか?日本には元々D2C的な流通が存在していたからです。
日本には伝統産業を中心に作り手に対してファンがつき、
ファンとの結びつきが強く、ファンの購買だけで作り手は生活が十分できていたのです。
その地域の特定の店でしか買えない日本酒や焼酎などがいい事例でしょう。

しかし、インターネットをはじめメディアの発達により情報が拡散されやすくなり、
物流インフラやECが発達し、その地域でしか買えない様な作り手の商品が手に入れやすくなりました。
また、通販もECサイトの構築が容易にでき、コミュニケーションの手段もSNSをはじめ多様化してきました。
元々あった生産者とファンの結びつきと物流インフラの発達やコミュニケーション手段の多様化により、
顧客の拡大と細かな情報の粒度が新たな潮流を生み、日本的D2Cが生まれたのです。

■D2Cのメリット、デメリット

改めて、D2Cとは、生産者と消費者が直接販売する商流になるのですが、間に卸業者や販売店などの中間業者を挟まないことにより、
生産者と消費者とのコミュニケーションが発生します。
これまでは卸業者や販売店などの中間業者を挟むことにより、直接消費者のコミュニケーションが取れなかったのですが、
自社で販売チャネルを持ち、TwitterやInstagramなどのSNSやメールなど多種多様のコミュニケーションチャネルを通じて、
全国はもとより全世界との消費者とのコミュニケーションが可能になります。

そして、コミュニケーションを重ねるごとに、まずは消費者の要望が見えてきます。
その要望に合わせるように商品だけでなく、販売チャネルなどの調整も可能ですし、
逆に、生産者の思い、考えも伝えやすくなると思います。
双方向のコミュニケーションを積み重ねるとコミュニティが自ずと形成され、
生産者と消費者で形成されたコミュニティは独自の世界観が紡ぎ出されるでしょう。
紡ぎ出された世界観がコンテクストになり、コンテクストが新たな消費者を呼び寄せる力になるでしょう。

もう少し詳しく見てみましょう。
まず、中間業者を挟まないことにより、直接消費者へ呼びかけることも、意見を求めることも可能になりました。
以前であれば電話であったり、ハガキでしかコミュニケーションが取れずに、双方に手間がかかっていました。
ですが、インターネットの普及により、メールは元より、TwitterやInstagram、LINE、Youtubeなど様々なコミュニケーション手段が確立されました。
WebやSNSでのコミュニケーションはデータ化が容易で、新商品開発や既存商品の改善、マーケティングに活用できるでしょう。
例えば、既存の消費者の趣味嗜好が似ているお客様にアプローチすることも可能ですし、
消費者の要望に応える形で商品のアップデートや、新商品を提供できれば、
消費者は積極的に購入してくれるでしょうし、また、新たなお客様に新たな商品を紹介してくれるでしょうし、
生産者の思いも消費者に届けやすくなり、共感した消費者は新たなお客様に語ってくれるでしょう。

消費者の意見と生産者の思いがSNSの中で何度も交わされると、
生産者を中心としたコミュニティーの形成が可能になります。
コミュニティが形成されると、コミュニティの輪を広げて行く形になりますが、
ここで無理をするとコミュニティの輪自体が崩れる可能性もあります。
コミュニティの輪を広げていくと、元々固定でいた消費者が疎外感を感じ離れていったりしますので、
無理のない範囲で徐々に広げていくのがベターでしょう。
コミュニティの中のコミュニケーションが生産者⇄消費者だけでなく、
消費者⇄消費者のような横の繋がりができると、より強固なコミュニティの形成が期待でき、
生産者を中心とした世界観が構築されるでしょう。
この状況になれば、自ずとコミュニティが拡張していき、
生産者を中心としたコミュニティの世界観に新たなファンが引き寄せられ、新たな消費者も生まれてくるでしょう。

また、販売チャネルとしてECサイトが登場し、機能は年々進化し、容易にECサイトが構築できるようになり、
現在はSNSから直接購入できるようになったりと、自社で管理できる販売チャネルも数多く増えてきました。
販売チャネルが増えるならまだしも、SNS上で展開できるようになり、タッチポイントを増やせるでしょう。

ここで整理しますと、メリットとしては、

  1. 中間業者を省くことによる収益性の向上
    2.顧客情報などのマーケティング上必要なデータの蓄積
    3.自由なマーケティング施策

逆にデメリットとしては、
1.販売チャネルなどの構築
2.顧客管理
3.自社でのマーケティング施策の実施

実はメリット、デメリットは表裏一体なのです。
ですが、デメリットはECサイトの構築ツール、顧客管理はCRMやコミュニティ管理ツール、
自社でのマーケティング施策も様々なツールがあり、
これらを活用することにより、デメリットを軽減させることが可能です。

では、日本的D2Cで勝つためには何が必要なのでしょうか?
次回で詳しくみていきましょう。

羽木昌尚

2004年にコンテンツプロバイダに入社。
デジタルコンテンツの権利の許諾獲得、自社サービスのプロモーション業務に従事。
2006年にコンテンツデベロッパーに入社。
自社アプリの広告出稿業務に従事し、担当アプリにて900万DL達成。
また、自社メディアでの広告マネタイズを経験。
2018年より独立し、モバイルゲームやアプリをはじめ、
有名おもちゃメーカーなど様々な企業、プロダクトのマーケティング戦略の立案と実行を支援。

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