スモールビジネスのマーケティング考  -新しい形のメーカー直販・D2Cってなに?②-

前回はD2Cのアメリカと日本の違いやメリット、デメリットを見てきましたが、
今回は日本的D2Cの必要な要素を見ていきたいと思います。

■世界観

日本的D2Cの最重要事項は、世界観だと考えています。
前回も記しましたが、同じような商品を安い価格で手に入れることは可能です。
わざわざ、D2Cで購入するには消費者に購入して頂く理由が必要になります。
購入を促す理由を構成するのが「世界観」だと思います。

例えば、人工的に作られた化学素材などで作られた吸水速乾性も高く着心地のよい機能的Tシャツと、
天然素材のみで作られたナチュラルTシャツがあったとします。
価格やデザインが同じであった場合、機能的Tシャツの方がナチュラルTシャツの方が売れるでしょう。

ですが、世界観が加わることにより、ナチュラルTシャツが売れる可能性があるのです。
今でいえばSDGsのようなソーシャルグッドを謳ってみたり、
生産までの過程をそれぞれの生産者の想いをストーリー仕立てで伝えることもありでしょう。
Tシャツに求められる機能だけを語るのではなく、
それらに付随する世界を伝え、共感して頂くことにより、ナチュラルTシャツが売れる可能性が生まれるでしょう。

少し極端な例で説明しましたが、世界観は重要で、
世界観は生産者の体験や実直な想いで形成され、その世界観に共感した消費者が実際に商品を購入し、
その世界観が良ければファンになり、ファン化が進めばエバンジェリスト(伝導者)になり、
エバンジェリストの周りから新たなファンが生まれるでしょう。
この流れを繰り返すことにより、D2Cは徐々に成長していくのです。

消費者も所有する喜びだけで満足せず、体験して得られる体験である「コト消費」を求めるようになり、
そして、所有することにより意思を示す「意思消費」になってきていると感じます。
SDGsのようなソーシャルグッドな活動に参加する意思を示すために、D2Cの商品を購入する理由になりますし、
理由を作ってあげる必要があるかもしれません。

■コンテンツ力

世界観を伝えるためにはコンテンツ力も重要になります。
生産者の様々な体験や実直な想いを一つのストーリーとしての体系化は必要ですが、
それ以上にそのストーリーがエバンジェリストが良さを伝えられるような形になっているでしょうか?
良さを伝えてもらうためには、明確で分かりやすいポイントが必要になってくるでしょう。
もちろん、使用時の体験として分かりやすいポイントがあればいいのですが、
その商品が作られるまでの工程での差別化のポイントであれば、
社会が抱える課題解決に繋がると明確であれば、十分に伝えられるでしょう。

また、マスメディアに取り上げられることもなく、
知る人ぞ知る商品であればエバンジェリストも喜んで情報をリアルグラフで話してくれるでしょう。
まさに「この商品は俺に語らせろ!」って思わせるような感じですね。

■コミュニケーション力

D2Cの魅力としてSNSなどを通じてのコミュニケーションも一つだと思います。
SNSそれぞれの特性を理解し、どのように運用していくべきなのか、きちんと考えていきましょう。
例えば、Twitterの場合ですと、情報の拡散力は高いですが、
流れる量も多くTLの流れに流されてしまいがちです。
Instagramの場合、画像で視覚に魅せるのは得意ですし、
動画の場合、YoutubeであったりTikTokも使えるのですが、
コンテンツの制作に時間やコストが掛かったりします。
最近ではDiscordと呼ばれるチャットサービスを使う例もあります。
それぞれ生産者からの情報発信を目的にするのか、
生産者と消費者との双方向のコミュニケーションを目的にするのかを考えましょう。

また、そこでのリアクションを何かしらのデータとして残し、
D2Cの運営に反映させるような流れができれば、
消費者から見ても非常に好感の持てる企業として、
ファンエンゲージメントが高まることが期待できます。

■ピュアな想い

最後に、D2Cとしで重要なのは、
生産者の想い<ビジネスと思われないようにすることでしょう。
「いや、商売なんだから」と思われがちですが、
実際の消費者は、意外とピュアな気持ちで購入という形で支援してくださるのです。
その消費者のピュアな気持ちを裏切るような行為は避けるべきでしょう。

羽木昌尚

2004年にコンテンツプロバイダに入社。
デジタルコンテンツの権利の許諾獲得、自社サービスのプロモーション業務に従事。
2006年にコンテンツデベロッパーに入社。
自社アプリの広告出稿業務に従事し、担当アプリにて900万DL達成。
また、自社メディアでの広告マネタイズを経験。
2018年より独立し、モバイルゲームやアプリをはじめ、
有名おもちゃメーカーなど様々な企業、プロダクトのマーケティング戦略の立案と実行を支援。

You May Also Like

More From Author