消費者購買行動の変遷

前回、ツール導入のあるあるを纏めましたが、様々な施策の効果が実際に指数化され、その関連性をKPIツリーで整理、分析できる様になり、これでようやく、マーケティング活動の基盤が出来ました。で、ここから実際にマーケティング活動を行えるのですが、まず第一歩に、キチンと消費者の事を考えているでしょうか?消費者がどの様に行動して、購買に繋がっているのか、今一度考えたいと思います。

■AIDMA

かつては消費者が情報を得られる手段が限られていた時代には、企業が発信するTVCMであったり、新聞雑誌の広告、交通広告など、一方向的なコミュニケーションのみで、かつ手段は限られていました。その様な状況下で「AIDMA」という消費者の購買決定のフレームワークがよく知られています。AIDMAとは分解すると、下記の様になります。

・Attention (注意)
・Interest (関心)
・Desire (欲求)
・Memory (記憶)
・Action (行動)

AIDMAモデルでは、広告などでAttention(注意)を引き、Interest (関心)を引き起こし、何度も広告に接触させDesire (欲求)を持たせ、Memory (記憶)に残し、購買のタイミングでAction (行動)に繋げるという流れでマーケティングを考える流れになります。このモデルは消費者の調べる、比較する行動が抜け落ちており、今の時代に即しておりませんが、基本的なフレームワークとして、まだまだ重要です。

■AISAS

インターネットの普及により、消費者自身がWebなどで商品を調べる事が容易になり、消費者の購買行動が変わります。ここで2005年に電通が提唱・商標登録した「AISAS」が登場します。

・Attention (注意)
・Interest (関心)
・Search (検索)
・Action (行動)
・Share (情報共有)

AISASモデルでは、広告などでAttention(注意)を引き、Interest (関心)を引き起こすまでは、AIDMAモデルと同様ですが、調べる環境が整っているので、消費者は商品の性能や口コミなどをSearch (検索)して、購買のタイミングでAction (行動)に至りますが、その評価をSNSや口コミサービスなどで、Share (情報共有)を行います。ポイントは、Search (検索)とShare (情報共有)が密接に関係しており、Share (情報共有)が他の消費者のSearch (検索)に大きな影響を与え、今までのAttention(注意)や、Interest (関心)を押し通す様なマーケティング活動では太刀打ちできない状況になりました。

■DUAL AISAS、SIPS

インターネットの時代が進み、マスメディアの接触時間を抜き、TVや新聞をはじめとするマスメディアが凋落し、消費者自身が発信する情報がより一層購買の決定力を握るようになります。これらの動きに対応するように、「DUAL AISAS」が提唱されます。今までのAISASを縦軸にとらえ、Attention(注意)を中心とした横軸に新たなAISASが加わります。
横軸のAISASは下記の様に分解されます。

・Activate (起動・活性化)
・Interest (興味)
・Share (共有・発信)
・Accept (受容・共鳴)
・Spread (拡散)

縦軸のAttention (注意)が今までの手法では効かなくなり、Attention (注意)の効果を広げる為に、商品そのものではなく、消費者の興味関心に沿った参加型の広告キャンペーンやバズ動画、共創型プロモーションなどコミュニケーション施策により、Activate (起動・活性化)させ、Interest (興味)を持ってもらい、Share (共有・発信)、Accept (受容・共鳴)、Spread (拡散)を促す事を組み込んだモデルになります。重要なのが、横軸のAISASと縦軸のAISASの連動性で、横軸のAISASが成功したのに、縦軸のAISASに繋がらない事が、多々あります。

DUAL AISASとは別にインターネット、特にSNSの普及に即した「SIPS」が2011年に電通のサトナオ・オープン・ラボ(現 電通モダン・コミュニケーション・ラボ)によって提唱されます。SIPSはAIDMAや、AISASなどの購買行動のフレームワークと異なり、あくまで生活者と企業とのコミュニケーションを考える上での一つのフレームワークになります。
SIPSを分解すると下記の様になります。

・Sympathize (共感)
・Identify (確認)
・Participate (参加)
・Share & Spread (共有・拡散)

広告にて知って興味、関心を持って検索する購買行動に至るのが今までの流れだが、SIPSの場合はSNSなどでSympathize (共感)できる情報に出会い、その情報について検索しIdentify (確認)し、SNSでシェアなどで他の人に勧めるParticipate (参加)を行い、SNSでお互いの情報をShare (共有)し、その情報がさらに別の消費者によってSpread (拡散)されていく一連の流れになります。あくまでも生活者と企業とのコミュニケーションのフレームワークになりますので、購買が伴いません。

他にも色々な消費者の購買行動のフレームワークがありますが、それぞれ一長一短がありますので、状況に応じて、使い分けてください。個人的にはAISASを軸にするのが、一旦ベターだと考えており、(予算に)余力があればDUAL AISASやSIPSを踏まえます。購買行動のフレームワークが見えてきたところで、次回はカスタマージャーニーについてまとめようと思います。

羽木昌尚

2004年にコンテンツプロバイダに入社。
デジタルコンテンツの権利の許諾獲得、自社サービスのプロモーション業務に従事。
2006年にコンテンツデベロッパーに入社。
自社アプリの広告出稿業務に従事し、担当アプリにて900万DL達成。
また、自社メディアでの広告マネタイズを経験。
2018年より独立し、モバイルゲームやアプリをはじめ、
有名おもちゃメーカーなど様々な企業、プロダクトのマーケティング戦略の立案と実行を支援。

You May Also Like

More From Author