インフルエンサーと企業と消費者と Part.2

前回インフルエンサーによる炎上や、虚偽紛いの騒動が起こるのかを紐解きましたが、今回はインフルエンサーを中心にしたコミュニティの形成、消費者がインフルエンサーとどのように向き合うべきか、そして、インフルエンサーがどのように企業から依頼された案件に向き合うべきかを考えていきましょう。

■インフルエンサーを起用したコミュニティの形成

インフルエンサーを起用したプロモーションは前回述べさせて頂きましたが、同じインフルエンサーを起用し続けた際に、ユーザー同士のコミュニティの形成、ひいてはLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)の向上が期待されます。では、インフルエンサーを用いてどのようにコミュニティを形成するのでしょうか?色々とパターンがあると思いますが、①インフルエンサーのコミュニティを活用、②インフルエンサーを呼び水にコミュニティ運営者を立ててコミュニティを形成、③ヘビーユーザーをインフルエンサーとしてコミュニティを形成など色々と方法はあると思います。

それぞれにメリット、デメリットがあると思いますが、①は手短に大きなコミュニティ形成が可能ですが、緩い繋がりのためコミュニティからの離脱は容ですので、人気投票などの短期間でのキャンペーンの一環として行うのに適切だと思います。②はオンラインゲームなどでよく見られる手法ですが、コミュニティ同士を競わせるなど熱量のコントロールが寿命のキモだと思います。③は自然発生的にできるケースも多いですが、アンバサダーキャンペーンなど近年では誘導を図る施策など見受けられます。

コミュニティが形成されても、コミュニケーションが取りにくい状況ではメリットは少ないです。インフルエンサーからコミュニケーションの主導権を移譲させるために、SNSやLINEなどにコミュニケーションを取れるようにしましょう。ここでいち早く情報を出したり、制作秘話などコミュニティ参加者が知りたいような情報や、ここでしか得られないような情報、思わず話したくなるような情報を提供しましょう。また、今のコロナ禍の状況では難しいですがオフ会など実施し、ユーザー同士の繋がりを強めたり、中の人から直接コミュニケーションが取れるような生配信など色々方法はあると思います。ここで重要なのは繋がりを意識することだと思います。消費者に媚びることも一つの手ですが、結局はそれだけの関係になってしまう恐れもあります。人と人とのコミュニケーションとしてキチンと伝えることが重要になります。

コミュニティ形成や運営は重要な施策になりますので、改めて語る機会があればと思います。

■消費者の負担

ここまで情報を発信する側の話でしたが、消費者がどのようにインフルエンサーと向き合うべきか考えていきましょう。20年前まで情報を発信できるメディアはテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4マスに加えて交通広告くらいでした。消費者はその数少ない情報を受け取り、購買するかどうか判断すると言う購買行動でした。しかし、インターネットの普及がメディア企業以外の消費者が情報発信できるようになりました。最初は善意や自己満足で消費者から情報発信されてきましたが、その消費者から発信された情報が検索により他の消費者の購買に影響を与えることが明確になり、広告商材化していきます。ここまでは問題はないのですが、その変化についていけない消費者も存在します。インターネット普及で消費者個人が情報を発信できるようになり発信される情報の量は数倍にも増えていますが、受け取る側の消費者はほぼ変わりがないのが現実です。大量に発信される情報に対して、消費者は取捨選択を求められます。しかし、大量の情報を前にすると、情報の取捨選択を誤る場合も十二分にあり得ます。その情報の取捨選択の誤りが単体であれば問題は少ないのですが、ごく稀に連鎖的に情報の取捨選択を誤ることもあるでしょう。この負の連鎖を起こさせるのが虚偽紛いの情報です。特にコンプレックス商材は人の弱みにつけ込む商品ですので、課題解決の為の判断力を奪い、余計に情報の取捨選択を誤ることが多いと思われます。

この情報過多の時代に求められるのは、無駄な情報を取捨選択するスルーする力と、スルーしなかった情報の裏付けだと考えています。スルー力は経験に基づくものですので、意識的にできる範囲が少ないですが、情報の裏付けは消費者自身の意識付け次第と思っています。気になったら検索して、裏付けをとる作業を行いましょう。しかし、企業側も賢く、検索に対しての対策を取ってきます。その一つがステルスマーケティングになります。

マスメディアの時代には情報の裏付けをとるにも手間が掛かり、消費者自身の経験値を基にほぼ信頼するしかありませんでしたが、インターネットの普及により第三者的な意見や裏付けをとることが容易になりました。ですが、実際のところは裏付けをとるのが面倒なので、様々な情報源自体を取捨選択し、消費者自身で信頼する情報源を選ぶ傾向があると思います。

多くの人が関わる企業メディアであればある程度は信頼を寄せられればいいのですが、企業メディアと自分で情報の裏付けを取れるようになった消費者との間にギャップが当然発生します。企業メディアは数多くの人たちに共感を得ようとしていますが、消費者個人個人にフォーカスを当てきれません。ですが、小規模メディアであったりインフルエンサーは消費者個人にフォーカスを当てられれば、消費者からの信頼を得られる可能性が高いです。しかしながら、意図的でないにしろ小規模メディアやインフルエンサーから発信されている情報が、チェックする機能が少ないために誤解を与える表現であったり、そもそも間違えている可能性が有り得ます。数多くの方々はその情報が誤りだと気付けるのですが、ごく稀に真に受けるケースが有ります。例えば、課題解決のために藁をも掴みたい消費者など考えられますが、情報発信メディアを信頼しきっている消費者が今回の場合は問題になります。情報メディアを信頼しきっている消費者が誤った情報を拡散させ、購入の動機で上位に来る「家族・友人から勧め」で他者を巻き込むことが考えられます。
このように誤った情報を拡散させる消費者にならない様に消費者側も情報の精査が重要になっています。また、マスメディアも稀に誤った情報を拡散させているのが見受けられるので、マスメディアから発信された情報であっても少しでも疑わしいと感じたらならば、裏付けをとりましょう。
今後は誤った情報と感じたのであれば、何がどの様に間違えているのか?と考察する訓練が必要になるでしょう。

■インフルエンサーへの課題

インフルエンサーについて、情報発信したい企業側と受け手となる消費者側の両方から考えてみましたが、実際にはその情報が信頼できるかどうか?企業側は意図通りに消費者が受け取ってくれ、どのような感情を抱くのか?消費者側は発信された情報が正しいのかどうか?信頼できる情報なのか?そして、その情報に何かしら有益性があるのか?全てインフルエンサーの意図や表現に全て左右されます。企業側はインフルエンサーに対し、いわばパートナーとして敬意を持ってコミュニケーションすべきですし、消費者側はまずはニュートラルな視点でインフルエンサーから発せられる情報を判断すべきだと思います。

インフルエンサーの方もマスメディアと同等に情報を発信しているメディアであることを認識して、誤った表現や勘違いを起こさせるような表現を避けるべきでしょう。このことはフォロワーの信頼を育て、フォロワー数を増やすための基本的な考えだと思います。フォロワー数を増やすために商品をおもしろおかしく伝えることも重要だと思いますが、度を過ぎると自分自身に跳ね返ってきます。商品を扱わない発信でも炎上するようなコンテンツなどは例えば、チャンネル登録数は多いけど、再生数が少ないとか企業側はもちろん視聴者も見ています。

情報を発信して欲しい企業側は、ランクをつけて依頼してきます。重要と考えているインフルエンサー、前回お話ししました有名インフルエンサーや専門的インフルエンサーに関しては、丁寧な依頼が来ると思いますが、単にフォロワー数だけ見て依頼してくる企業も多いでしょう。明らかにフォロワーの嗜好と依頼された商品が異なれば取り上げる必要はないですし、インフルエンサー自身が目指す方向と異なれば断る勇気も必要です。フィーが発生する依頼の場合、尚更、精査が必要になります。例えば、配信するだけでフィーが発生する案件、成果が上がった分だけフィーが発生する案件(アフィリエイト案件)などありますが、商品内容とフォロワーとの相性をキチンと精査しましょう。また、アフィリエイト案件はどのように成果として認められるのかなど効果測定の部分も確認しましょう。もし可能であればアフィリエイトのフィーに加えて、少額ですが配信フィーが発生するセミアフィリエイトの交渉も必要になるでしょう。企業側としては、フィーを抑えたいのは当然として、諸々の調整の時間的コストも削減させたいので、落とし所を見つけて、指値での交渉も有効でしょう。

■最後に

情報発信したい企業のインフルエンサーを起用したマーケティングから始まり、インフルエンサーを用いたマーケティングが抱える諸問題とコミュニティ形成のメリット、情報の受けて側の消費者の負担が増えている件、そして、インフルエンサーのメディアとしての責任と考察してきました。インターネットの発達により、情報発信が容易になり、誰でも情報発信が可能になりました。そのような世の中で企業側としては、インフルエンサーを起用し飛び交う情報のなかで、伝えたい内容を消費者が間違えないようにインフルエンサーと取り組んで頂きたいです。

羽木昌尚

2004年にコンテンツプロバイダに入社。
デジタルコンテンツの権利の許諾獲得、自社サービスのプロモーション業務に従事。
2006年にコンテンツデベロッパーに入社。
自社アプリの広告出稿業務に従事し、担当アプリにて900万DL達成。
また、自社メディアでの広告マネタイズを経験。
2018年より独立し、モバイルゲームやアプリをはじめ、
有名おもちゃメーカーなど様々な企業、プロダクトのマーケティング戦略の立案と実行を支援。

You May Also Like

More From Author