Cocktail Story ~ バーの価格設定と決め方

introduction

 今回はバーの価格設定がどの様に行われるかを解説していきます。バーでのお酒一杯の価格は他の飲食業態と比較すると少し特殊かもしれません。そんな価格の設定について私の経験したなかでお話出来ればと思います。

バーの原価率

 どの業界でも当然ですが飲食業においても原価率の設定と徹底はとてもシビアに行われます。ここを疎かにしてしまうと売上が上がっているにも関わらず経営が破綻してしまうかもしれません。私がこれまで勤務した店舗では大まかに20%から30%で設定されていました。ざっくりで言うと1000円のカクテルで原価300円と言う事になります。こう聞くと一杯700円の利益が出て1日に50杯出せば35.000円も利益がでますが、あくまで原価と売価の差額でありそこから人件費や家賃などを捻出し残りが利益となります。簡単な話ですが低いほど利益が出し易く、例外はありますが高単価な店舗ほど原価率は低くし易いことになります。

価格設定について

 先程の原価率を踏まえた上で価格設定についてみていきましょう。私がこれまで勤務していた店舗や運営していた店舗では先に最低価格を決めます。例えばそのバーで一番安いドリンクが800円のビールであった場合、いかなるドリンクもその800円より安くなる事はありません。ソフトドリンクであっても同様で800円となりその場合原価はだいたい10%になります。最低価格を決めたら次は高い頻度でオーダーされるであろうカクテルやウイスキーなどに価格を設定しますがここで更にカクテルやウイスキーの最低価格を設定します。ここでは1000円としましょう。ジントニックが1000円であった場合原価は経験上230円ほどになり23%となりますが、使用するジンやトニックウォーターによってはもう少し原価があがります。高頻度でオーダーされるであろうカクテルの原価率を高くし過ぎた場合は、全体の原価率上昇に繋がるため注意が必要です。

 次にボトルでの仕入れ価格が3000円程のスタンダードなウイスキーを1shot30mlで1000円としたらボトル1本から23杯ほどとれますので原価は約130円、約13%の原価とかなり低くなりバーはとても儲かりそうに見えます。しかしながらバーには安価なお酒もあれば高価なお酒もあり、全てのアイテムでこの様な低い原価率を設定できるわけではありません。1本10万円のウイスキーを同じ原価にしてしまうと一杯30.000円以上になります。極端な例にはなりましたが高価なアイテムにも一律原価にしてしまうと売価が高くなり過ぎてオーダーの頻度が極端に下がります。そこで高価なアイテムほど原価率を高く設定していきます。先程の10万円のウイスキーであれば最後の1.2杯がやっと利益になるくらいの設定にする事が多いでしょうか。この様に価格設定にバランスを取り、結果的に原価率が設定範囲に収まるようにします。

 私が知る中では良心的な価格設定のバーは高価なアイテムほど原価率が高く設定されている傾向が強いと思います。あまりバーテンダーに価格や原価を聞きすぎるのもどうかとは思いますが機会があれば話してくれるかもしれません。その様なバーを見つけた方は中々に幸運かもしれませんね。

Ending

 もちろんバーの価格設定は千差万別で同じアイテムでも価格に大きな差がある事など普通に良くある事なので、その時にあの店ではいくらだったなどと言う話をバーでするのはやめましょう。法外なぼったくりでない以上はその店にはその店の理由があり価格が決まります。今回私が話した内容はあくまで例の一つとご理解ください。


四ノ宮清十郎

若くしてバーの世界に飛び込む。
オーセンティックバーなどで修行を積み、独立。
現在は関西を中心に飲食コンサルタントとして活躍中。

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